こんにちは。企画制作の新倉です。
「新書で横浜」第3回。
本日の道案内はこの新書です。
『負け犬の遠吠え』(講談社、2003年)もそうでしたが、タイトルのうまさが光ります。ユーミンのいったいなにが「罪」なのか。おもわず手に取ってしまいました。
デビューアルバムの「ひこうき雲」から、1991年に発売された20枚目のアルバム「DAWN PURPLE」まで、「ユーミンの時代を振り返ることによって、女性と世の中の変化を検証」した著者は、ユーミンの歌は「女の業の肯定」、という結論に達します。
そんなユーミンの数あるアルバムの中で、横浜関連といえば、ご存知「山手のドルフィン」。2枚目のアルバム「MISSLIM」の中、「海を見ていた午後」に出てくるお店の名前です。
8月のある日、仕事帰りに降り立ったのは根岸線の根岸駅。ここが「山手のドルフィン」の最寄り駅です。「駅南側には製油所があって、石油を運ぶタンク車がたくさん停まっている、貨物好きにはたまらないだろうけど、全く情緒的ではない駅」(「ユーミンの罪」)です。
ネット上には、ドルフィンまで徒歩7分という情報があったのですが、10分を過ぎても、まだこんなところを歩いています。
目印の「根岸不動下」交差点にたどり着いた時点で、すでに倍の時間が過ぎていました。
そこから坂道をひたすら登って、たどり着いた「不動坂上」に、めざすドルフィンはありました。駅から30分以上の道のりでした。
ちょっとおしゃれすぎて、ドアの前で一瞬立ち止まったのが、いけません。「定番」のソーダ水を注文するのも、なんだか急に恥ずかしくなって、しばしガラスのドアとにらめっこ。なさけないことに、気が付いたら後ずさりしていました。
でも、せっかくここまできたのですから、いくつかの確認はしなければなりません。
まず、ドルフィンから海は見えるか。車道からは海はまったく見えません。カメラを頭上に構えて、高い塀越しに撮ったのがこの写真。
三浦岬は見えませんが、貨物船が行き交う東京湾は随分大きく見えました。これなら、ソーダ水の中を貨物船が通ることもあるかもしれません。
それにしても、駅からドルフィンまでの距離が気になります。著者は「普通であれば、駅からタクシーに乗る距離」と書いていますが、実際そんな距離でした。
「坂を上がって きょうもひとり来てしまった」(「海を見ていた午後」)ユーミンは30分以上の道のりを、歩いてかよったのでしょうか。
謎が説けました。
帰り道、根岸駅への「近道」発見です。この道を歩けば、駅から7分も可能かもしれません。
ちょっと薄暗くて、かなりの急坂ですが、雰囲気のある道を一気に下ります。
近道の登り口を告知する小さな看板。往きにこれを見落とさなければ、30分のアルバイトはしなくてすみました。
ここがバス通りからの分岐。看板はこの奧にあるのですから、往きに見つけるのはまず無理ですが…。
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気後れして入れなかったお店。
帰りに見つける近道。
なんだか、トホホの連続ですが、これもまた町歩きの醍醐味と、強がりを言っておきましょう。
「女の業の肯定」が、なぜ「罪」なのか、実はいまひとつ飲み込めないままなのですが、ユーミンの歌から、「肯定」のおすそわけをもらったと感じる世代として、読み応えのある新書ではありました。
ドルフィン
住所:横浜市中区根岸旭台16−1
電話:045-681-5796
営業時間:11:00~22:00(L.O.21:00)
定休日なし、専用駐車場12台
チャージ料金:500円(18時以降)
■「新書で横浜」第2回「古文書返却の旅」-日本常民文化研究所展示室-はこちら